主人公は僕だった

 「私はお菓子の力で世界をより良くすればよいと思った」

 単調で規則正しい毎日を送る平凡な男ハロルド・クリック(ウィル・フェレル)は、ある朝、自分の生活を文学的に描写する女性の声が聞こえるようになった。その声は、自分の行うことを的確に予測していて気味が悪い。ところが「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった」という声が聞こえたから大変だ。

 本作は、ある作家が書く小説のストーリーに左右される男の話だ。

 ハロルドは、自分の運命を決めようとする声の主の作家を捜し出し、結末を書き換えてもらおうと奔走する。そんな中、彼はパン屋の女店主アナ(マギー・ギレンホール)と出会い心惹かれていく。彼女は法律家を目指した優秀な学生だったのだが、クッキー作りが上手だったことから生き方を変えた。アナが今の生き方を選んだ訳をこのセリフで説明した。

 こうしたナンセンスな設定だと、薄っぺらなドタバタ喜劇に思えるだろうが、意外と真っ当で、生きるというテーマをしっかりと真ん中に据えている。

 人はいずれ死ぬことは分かっている。スタートからゴールまでのルートをどう辿っていくかが生き方だろう。アナはそれを自らの意志で選び納得して生きている。ところがハロルドはただ流されるままの生活だった。

 天の声で初めて自分は何のために生きているのかと気付かされた彼は、小説家に、どんな結末を書かせようとするのか。

 2007年5月公開。本編1時間52分、発売・ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。3990円=コレクターズ・エディション。

主人公は僕だった

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