心中抄

 主人公は、45歳の作家である「私」。一回り年下の女との逢瀬を重ねる中、私は幼い頃の自分に思いを馳せる。

 保育園に行かず、ぼんやり川を見て過ごしたこと。小学校に忍び込んで先生の万年筆を盗み、友だちを殴り、教室で立たされたこと。自分だけは死ぬはずがないと、学校の屋上の縁にぶらさがり、走ってくる車に飛び込んだこと。親からも先生からも匙を投げられた私を可愛がってくれた芸者・雪乃とのこと。

 だが、彼女は心中によって命を絶ち、大人になった私もまた、女と2人、闇の中の黒い橋を渡ろうとしていた。

 過去を思い返すうちに、現実と虚構の境が曖昧になっていく。私が求めているのは何なのか。そして私にできることとは…。

 故郷・新潟を舞台に幼少時の記憶を甦らせ、自身の原風景を描き出す。

 (藤沢周著、河出書房新社・1470円)

心中抄

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