女帝『エンペラー』
原作は、シェークスピアの『ハムレット』だ。王だった父を毒殺され、母を奪われ、自らも殺されそうになる王子ハムレット。新王となった叔父に、彼が復讐しようとするドロドロの悲劇である。
この名作の舞台を中国王朝に置き換え、奪われる王妃は後妻でかつては王子の恋人だったという設定にして、王子を更にヤキモキさせるという筋だ。若き王妃ワンをチャン・ツィイーが演じる。
映るだけでオーラを発す稀有な女優である。『初恋の来た道』以来、ツィイーファンの筆者としては見逃せない作品だ。
だが、この映画は、彼女よりも美術セットを褒めてやりたい。明らかにお芝居の舞台を意識していて、それは大胆な構図を作り、壮麗にして豪華な素晴らしい芝居空間を生み出している。日本映画界・美術の大御所・木村威夫氏担当の、鈴木清順監督『東京流れ者』を思いだした(そういえば清順監督はツィイーと『オペレッタ狸御殿』を撮った)。だから、ワイヤアクションを駆使した殺戮(さつりく)シーンなども、美しい舞踏を見ているような映像美になっている。
このセリフは、王子が密かに街に出て毒を求めた毒売人が呟いたもの。心変わりや裏切りは、猛毒となって人を苦しめる。権力にしがみつこうとする心も、おぞましい毒を撒き散らしている。
この作品は、ドラマというより絢爛(けんらん)なショーを見るつもりの方が楽しめるだろう。大画面テレビの方は、この美しい舞台芸術を満喫してもらいたい。
2007年6月公開。本編2時間11分。発売・ギャガ・コミュニケーションズ、3990円。
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