サブタイトルは「失われた風景を求めて」。原っぱの夕焼け、台風が来た夜のローソクの明かりや、わくわく気分、夏の必需品・蚊帳、夏祭りの楽しみ・縁日、防水バケツの氷、霜柱…。それらの描写が登場する文芸作品やエッセーなどとともに昭和17年生まれの著者の思い出が綴られる。
縁日の章で紹介される作家、
都筑道夫著「
東京夢幻図絵」で都筑氏が≪庶民の歴史の上で、どんな些細なことでも…わからなくなっていい、というものはないはず≫と昭和の風俗記録を残す意図を記しているが、本書も、まさにその延長線上の試み。
著者によると、こうした風景が大きく変わった境界線は東京オリンピック(昭和39年)。それまでの、江戸以来の空気をそのまま伝えていた時代を「良きにつけ悪しきにつけ、いまに比べて人間がより人間らしく暮らせていた」と断じている。
そんな著者の思いがにじんだ文章、さまざまな光景を再現したイラストも味わい深い。昭和36年生まれの記者も納得の1冊だ。
(文・
奥成達、絵・
ながたはるみ、いそっぷ社・1680円)
昭和30年代 スケッチブック