ペルセポリス

 1970−90年代の激動のイラン現代史を背景に、自分らしく生きようと奮闘する少女の成長を、ユーモアたっぷりに描いたアニメーション。イラン出身でパリ在住のマルジャン・サトラピ監督が自伝的グラフィック・ノベルを自ら映画化し、米アカデミー賞前哨戦とも言われるゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされている。

 イランと聞くだけで“難しくて複雑で理解不能”と思いがちだが、今まで分からなかったことや混乱していたことも、すんなり理解できる点において本作は優れもの。

 何不自由なく暮らしていた少女マルジャンの生活は、イラン革命を経てイスラム政権が樹立すると一変。次々に色々な行動が制限、規制される。素直に疑問を唱える彼女の言動が危険だと、心配した両親の勧めで14歳で単身渡欧。孤独、失恋、価値観の再発見など、普遍的な青春ストーリーとしても味わい深い。日本人からみると、“真の自由”“価値観”について、じっくり考えさせられる。

 どんな逆境でも、恐怖に捉われても、人間としてどう生きるべきかを教え諭す祖母の大きさ、母の愛も感動的だ。マルジャンの声をキアラ・マストロヤンニ、母をカトリーヌ・ドヌーヴと、実の母娘が共演。祖母を、多くの映画でドヌーヴの母親を演じてきたダニエル・ダリューが担当しているのは映画ファンの心をくすぐる。

 モノクロームの表情の豊かさに驚かされ、アートな気分にさせられるが、物語の持つ力強さと相まって、実にダイナミックな味わい。彼女のエネルギッシュな才気に、見終えるころにはゾクゾク興奮を覚える人も多いハズだ。知的好奇心を大いに満足させられる。

ペルセポリス

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ぜんぶ、フィデルのせい

 1970年のフランス。それまで楽しい毎日を過ごしていた9歳の女の子アンナは、突如、共産主義にどっぷりハマった両親のせいで、大好きなキューバ人乳母は解雇され、ミッキー・マウスも取り上げられた。アンナは怒り心頭。「ぜんぶ、フィデル・カストロのせいなのね!」。当時のフランス社会の激動ぶりと大人に振り回される子供の心情を子供の視線からコミカルに描いた仏映画。

 19日から、恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー。

ぜんぶ、フィデルのせい

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迷子の警察音楽隊

 長い間、敵対していた隣国に招待され、イスラエルへとやってきたエジプトの警察音楽隊のオジサンたち。だが、空港に着いた瞬間、迷子に。さあ、どうする?

 波瀾(はらん)万丈な物語かと思うかもしれないが、それがまったく正反対。口下手を通り越し、何を考えているのか分からないおじさん連中が、オロオロするでもなく、周囲に流されるまま行動する。その空気の読めなさがなんとも面白い。また、無口だからこそ、背中で語られる哀愁にそれぞれの人生を感じ、ホロリとさせられてしまうだろう。

 とはいえ、爆笑し、号泣できる作品ではない。ある意味、とても難しい。情報を与えられることに慣れ、そのような作品が乱発される現在、劇中の空気や間から読み取ることを求められると、自分の中で即座に消化しきれないからだ。そうではない方もいるだろうが、私はその場で良作かどうかも判断できなかった。それゆえ、時間がたつにつれ、じわじわと侵食し出し、結局、もう1度見たくなってしまう。噛めば噛むほど味が出てくる、まさに中年の生き方のごとき作品なのだ。

迷子の警察音楽隊

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やわらかい手

 男のリアルで生々しい欲望と60歳のおばあちゃんの人生が、壁の穴を通して交差する。きわどい話だが、どこかこっけいで心が温かくなる。

 ロンドンの繁華街にあるフーゾク店。お客が地下に降りると、殺風景な部屋の壁に穴がある。客は穴にペニスを突っ込み、反対側の部屋で待ち受けた女性がそれをしごく。

 おばあちゃんは、難病で倒れた孫の手術費を稼ぐためこの≪手コキ部屋≫で働き始める。おばあちゃんの「やわらかい手」が評判を呼び、客の行列ができる。モーレツに忙しくなった彼女はテニスひじならぬペニスひじ! で“黄金の右手”が使えなくなるが、それでも左手で頑張る根性に感心した。

 どんな仕事でも一生懸命に働く女性の姿は美しい。平凡でさえない主婦だったおばあちゃんはやがて人生に自信を持ち、どんどんかわいくなるところがいい。そんなヒロインを1960年代にミック・ジャガーの恋人だったマリアンヌ・フェイスフルが好演。監督はドイツ出身でこれが長編第2作のサム・ガルバルスキ。人には意外な才能があることを教えてくれる、おばあちゃんの自立映画になっている。

やわらかい手

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呉清源 極みの棋譜

 ビル・ゲイツイチローから大相撲の普天王アンガールズ田中まで、囲碁好きの有名人は少なくない。最近では小沢一郎Vs与謝野馨の公開対局が話題を呼んだ。

 そんな愛棋家たちにとって神様のような存在が呉清源である。中国から14歳で来日し、帰化。昭和の囲碁界で一時代を築き上げ、今年93歳になった。映画は氏の自伝を基にしている。

 ピーンと張り詰めた部屋で、碁盤上の“宇宙”を一心に見つめる若き日の呉清源。演じる台湾のスター、チャン・チェンのたたずまいがいい。勝負師というよりも求道者といった感じがよく出ている。柄本明、松坂慶子らも実在の棋士役で登場。衣装デザインのワダエミら日本人スタッフも多い。

 とはいえ、これはれっきとした中国映画。田壮壮監督は日中戦争前後に焦点を当て、一時期、新興宗教に走ったエピソードなども挿入している。だが同じく入信した双葉山の存在などに触れつつも、決して深入りはしない。生臭さがない分、欲求不満も覚える。繊細かつ品位のある映像は素晴らしいけれど。

呉清源 極みの棋譜

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バタフライ エフェクト2

 恋人を助けるため何度も過去へ戻り、人生が狂わされていくさまを描いた「バタフライ エフェクト」の続編と聞けば、期待するのはやはり、切な過ぎるラスト。

 序盤は好調だ。交通事故で恋人が死亡、茫然(ぼうぜん)自失となった主人公が、過去へ戻れる能力を発見したことで事故を防ぐ−と、なかなかの展開。しかし、徐々に暗雲が…。主人公は恋人への思いから過去へ行ったはずなのに、仕事のミスをなかったことにしたい、金持ちになりたい、出世したいなど、私利私欲に突っ走りだす。

 確かに、過去をやり直せる能力があれば、「そういった部分で力を使うよなぁ」と共感できる。納得もする。だが、主人公の行動に呆れて「そうじゃないだろ!」とツッコミを入れているうちに、切なさは皆無のまま終了してしまう。

 VFXはたいしたことなく、正直、前作よりも劣る。とはいえ、サスペンスでありながら笑え、文句を言いつつも印象に残ってしまう作品も珍しい。期待し過ぎると肩透かしをくらうが、出世競争に身を投じる社会人にとっては、ある意味、見る価値は高いだろう。

バタフライ エフェクト

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めがね

 単館公開で興収5億円のヒットとなった『かもめ食堂』のキャストとスタッフが新たな癒やしの物語を誕生させた。

 めがねをかけた男女5人。海辺の町でゆったりと流れる時間を過ごし、たそがれることの素晴らしさを訴えかける。何にも捉われず、自分のやりたいことをし、楽しい会話を繰り広げながら美味しいものを食べと、見ている側からすれば、ある意味、拷問にあっているかのよう。その空気感を楽しめなければ、この映画を見た意味がない−と、説教されるかもしれないが、癒やされる前に痛めつけられるのだからしょうがない。正直、そうしたくても出来ない現実が、頭をかすめてしまうのである。22日公開。

 【ここに注目!】

 ひたすら何も起こらず、物語は進んでいく。そこを退屈と取るか、癒やしと感じるかはあなた次第。

めがね

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ファンタスティック・フォー 銀河の危機

宇宙放射線を浴びて様々な能力を持つ超人となった、リード、スー、ジョニー、ベンの4人からなるファンタスティック・フォーは、困難な事件に立ち向かうヒーロー集団だ。ある日、地球上空に銀色の飛行物体、シルバー・サーファーが現れた。これが出現した惑星は、8日間で滅亡すると言われていた…。

 2年前の前作に引き続き、今回もファンタスティック・フォーが大活躍。特に知識がなくてもド派手アクション作品として楽しめる。莫大な金を使っているのは一目瞭然なのに、B級映画だと感じてしまうのはなぜなのだろう。とりあえず、お色気要素もバッチリで、B級好きなら満足。21日公開。

 【ここに注目!】

 満を持して登場したシルバー・サーファーの破壊能力に唖然。でも、綺麗な女性には弱いって、地球の男と同じかよ!

ファンタスティック・フォー 銀河の危機

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