主人公は僕だった

 「私はお菓子の力で世界をより良くすればよいと思った」

 単調で規則正しい毎日を送る平凡な男ハロルド・クリック(ウィル・フェレル)は、ある朝、自分の生活を文学的に描写する女性の声が聞こえるようになった。その声は、自分の行うことを的確に予測していて気味が悪い。ところが「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった」という声が聞こえたから大変だ。

 本作は、ある作家が書く小説のストーリーに左右される男の話だ。

 ハロルドは、自分の運命を決めようとする声の主の作家を捜し出し、結末を書き換えてもらおうと奔走する。そんな中、彼はパン屋の女店主アナ(マギー・ギレンホール)と出会い心惹かれていく。彼女は法律家を目指した優秀な学生だったのだが、クッキー作りが上手だったことから生き方を変えた。アナが今の生き方を選んだ訳をこのセリフで説明した。

 こうしたナンセンスな設定だと、薄っぺらなドタバタ喜劇に思えるだろうが、意外と真っ当で、生きるというテーマをしっかりと真ん中に据えている。

 人はいずれ死ぬことは分かっている。スタートからゴールまでのルートをどう辿っていくかが生き方だろう。アナはそれを自らの意志で選び納得して生きている。ところがハロルドはただ流されるままの生活だった。

 天の声で初めて自分は何のために生きているのかと気付かされた彼は、小説家に、どんな結末を書かせようとするのか。

 2007年5月公開。本編1時間52分、発売・ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。3990円=コレクターズ・エディション。

主人公は僕だった

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オープン・ウォーター2

 広い海原にひとり取り残されたらどうする? 海洋パニック映画の第2弾。

 メキシコ湾沖でヨットクルーズを楽しむ男女6人。酔って泳ぐうちに、ヨットに上がるためのはしごを下ろしていなかったことに気づき…。

 本編1時間34分+映像特典。発売元・ショウゲート、3990円。

オープン・ウォーター

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ブラック・スネーク・モーン

 孤独な元ブルースミュージシャンがセックス依存症の若い女性を“荒療治”で治す、衝撃作。

 米南部の田舎町に住むラザルス(サミュエル・L・ジャクソン)は、自宅近くでけがをした女レイ(クリスティーナ・リッチ)を見つけ、連れ帰る。彼女が誰とでも寝るセックス依存症だと知り、彼女を鎖で縛り付けるが…。

 本編1時間56分+映像特典。発売元パラマウントホームエンタテインメント。4179円=スペシャル・コレクターズ・エディション。

ブラック・スネーク・モーン

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舞妓Haaaan!!!

 新年には初笑い−。腹の底から笑い転げて、ちょっとホロリとなって、ああ、日本はイイなあと思えれば、それはそれで今年も元気になれるだろう。この映画はそんなハッピーな気持ちを与えてくれる。

 クドカン(宮藤官九郎)が脚本、個性派俳優の阿部サダヲが主演、京都の花街が舞台で舞妓の世界を題材にしたドタバタ・コメディー。「憧れの舞妓はんと野球拳を」という、多分読者諸氏も一度は空想した夢を、本気になって追い求めるサラリーマン鬼塚公彦(阿部サダヲ)が、「一見さんお断り」の高い敷居を、ハチャメチャな熱意で乗り越えて夢をかなえていく物語だ。

 ドタバタでナンセンスギャグが続くと思ったら、後半は人情話に転換し、そして最後はハッピーエンド。まさに松竹新喜劇の流れをくんだ伝統的な喜劇のパターン。

 が、そこはクドカン、笑いの作りは今をとらえて新しい。なんたって阿部の演技が光る。古きアチャラカ喜劇を彷彿とさせる。エノケンや三木のり平らのデビュー時、きっと彼の登場のような驚きがあったのだろう。脇を固める堤真一柴咲コウ伊東四朗らの絡みもイイ。

 このセリフは舞妓オタクの鬼塚が恋した駒子(小出早織)に言ったもの。オタクであることの表明で、自己確立と自立の宣言だ。好きなことが生きる活力となることを教えてくれる。

 人によってはこの奇想天外、場当たり的なストーリーに呆れる方もいるだろう。だが、ときにはバカバカしさの波に身を委ねてみるのも、意外と楽しいものだ。

 2007年6月公開。本編2時間、発売・バップ、5040円。

舞妓Haaaan!!!

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ボルベール<帰郷>

 失業中の夫がなさぬ仲の娘に関係を迫り、娘が夫を刺殺。最愛の娘のために奔走する女の前に、別の死体が登場し…。

 マドリードに住むライムンダ(ペネロペ・クルス)は、娘パウラが夫を刺し殺したことを知る。一方、叔母が急死し、パウラの亡母の幽霊が現れるという話まで出て、彼女の周囲は慌ただしくなる。

 スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督のユーモアが生き、カンヌ映画祭などで絶賛された。

 本編2時間+映像特典。発売元ギャガ・コミュニケーションズ。4935円=コレクターズ・エディション。

ボルベール帰郷

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歌謡曲だよ人生は

 オムニバス映画は好きでなかったが、この作品を見て深く反省をした。オムニバスでも面白いものは面白い。これは本年のベスト5に入れてもいいと思う。

 考えてみれば歌謡曲は、人の心の奥底を揺さぶるような3分ほどのドラマである。そんな歌謡曲にインスパイアー(喚起)された監督が、昭和のドラマを平成の視点で映像化し直すのだから、一筋縄でいかないドラマが作られる。笑った。そしてジーンと来た。

 昭和34年、守屋浩が歌った『僕は泣いちっち』。最初の話はこの歌が流れる恋愛ドラマ。東京に行ってしまった女友達を見送った青年がこのセリフを言ったのだ。そうなのだ。その頃は、みんな東京に憧れていた。あそこには青春があったと誰もが思っていた。阿久悠さんは、歌は情報で「歌で東京の風景を妄想した」と書いていた。歌謡曲は若かった青年や乙女に青春と恋と東京を妄想させたものだ。

 第6話の『ざんげの値打ちもない』では、余貴美子さんがイイ味を出している。昔に苦い恋をした女の役で、平成生まれの若いカップルの恋に優しいまなざしを向けていた。我らもこの視点のおとなになっていたと気付かされた。

 他に取り上げられた曲は、『これが青春だ』『小指の想い出』『ラブユー東京』『女のみち』『いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー』『乙女のワルツ』『逢いたくて逢いたくて』『みんな夢の中』。

 この映画は映像の紅白歌合戦だ。年越し、この映画を見て過ごすのも一興だろう。

 2007年5月公開、本編2時間10分。発売・アルタミラピクチャーズ、ザナドゥー、ポニーキャニオン、3990円。

歌謡曲だよ人生は

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憑神

 人気作家、浅田次郎のユーモア時代小説を映画化。出世を願う下級武士の思いが逆になり…。

 時は幕末。別所彦四郎(妻夫木聡)は、毎日暇をもてあます御家人。お稲荷さまに出世を祈願したはずが、逆に貧乏神(西田敏行)が出てきてしまい…。疫病神、死神にも取りつかれた彦四郎の運命は。監督は「鉄道員ぽっぽや)」の降旗康男

 本編1時間47分+映像特典。発売元東映ビデオ。3990円=通常版。

憑神

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女帝『エンペラー』

 原作は、シェークスピアの『ハムレット』だ。王だった父を毒殺され、母を奪われ、自らも殺されそうになる王子ハムレット。新王となった叔父に、彼が復讐しようとするドロドロの悲劇である。

 この名作の舞台を中国王朝に置き換え、奪われる王妃は後妻でかつては王子の恋人だったという設定にして、王子を更にヤキモキさせるという筋だ。若き王妃ワンをチャン・ツィイーが演じる。

 映るだけでオーラを発す稀有な女優である。『初恋の来た道』以来、ツィイーファンの筆者としては見逃せない作品だ。

 だが、この映画は、彼女よりも美術セットを褒めてやりたい。明らかにお芝居の舞台を意識していて、それは大胆な構図を作り、壮麗にして豪華な素晴らしい芝居空間を生み出している。日本映画界・美術の大御所・木村威夫氏担当の、鈴木清順監督『東京流れ者』を思いだした(そういえば清順監督はツィイーと『オペレッタ狸御殿』を撮った)。だから、ワイヤアクションを駆使した殺戮(さつりく)シーンなども、美しい舞踏を見ているような映像美になっている。

 このセリフは、王子が密かに街に出て毒を求めた毒売人が呟いたもの。心変わりや裏切りは、猛毒となって人を苦しめる。権力にしがみつこうとする心も、おぞましい毒を撒き散らしている。

 この作品は、ドラマというより絢爛(けんらん)なショーを見るつもりの方が楽しめるだろう。大画面テレビの方は、この美しい舞台芸術を満喫してもらいたい。

 2007年6月公開。本編2時間11分。発売・ギャガ・コミュニケーションズ、3990円。

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キトキト

 最近、家族間での殺人−殺伐とした事件が目につく。子離れできない親、親離れできない子が多いと聞くが、悲劇の一因にはこうした問題もあるだろう。

 これは、女手ひとつで2人の子どもを育て上げた斎藤智子(大竹しのぶ)が、家を出ようとする息子の優介(石田卓也)に言ったセリフ。東京行きの電車に乗るのをためらう裕介の背を、そう言って精一杯に押す母の姿は寂しそうだった。3年前に娘の美咲(平山あや)も駆け落ちで上京していて、これでひとりぽっちになってしまった。でも母は強い。新しい恋をして、スナックを切り盛りして、パソコンを習い始める。

 舞台は富山県高岡市。タイトルの「キトキト」とは、富山の言葉で「生きがいい」の意味だそうだ。離れていても家族は家族。家族との絆は大切な生きがいだというメッセージなのだろう。

 これはご当地映画と言われるもの。ここ数年、各地にフィルムコミッションという団体が誕生して、映画などの撮影の誘致を行っている。ロケ地になることで観光資源を生み出し、地域の振興につなげていこうという運動だ。以前、地域おこしに積極的な監督と話したことがある。地元の人たちを巻き込むことで、町おこし運動のきっかけを作れると言っていた。よい話ではないか。ただ、作るなら名所回りドラマではない、土地柄を生かした作品を作ってもらいたい。でも、大竹しのぶはなんて演技がうまいのだろう。特に方言を使った演技はすばらしい。軽く笑えて、ちょっとホロリとさせられた。

 2007年3月公開。本編1時間49分。発売・ハピネット、4935円。

キトキト

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レッド・ツェッペリン 狂熱のライブ

 再結成で話題の伝説のロックバンド、レッド・ツェッペリン全盛期のライブ模様を収めた映画が再び登場。1973年7月のニューヨーク公演を見れば、このバンドを超えるバンドがいまだいないことを再認識!

 本編2時間17分+映像特典50分。発売元ワーナーホームビデオ。3980円=スペシャル・エディション。7980円の限定コレクターズエディションも発売。

レッド・ツェッペリン 狂熱のライブ

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