タイムトラベラー
「ロンドンに住む12歳の少年ピーターは約束を破った父親に腹を立て、「父さんなんか、大っきらいだ!」と叫び、けんか別れしてしまう。
気の毒に思ったお手伝いさんが気晴らしにと彼を田舎の農場へ連れ出した。農場にいた少女ケイトに誘われ、宇宙論を研究するケイトの父親の部屋で遊んでいると、反重力マシンが作動し子供たちは18世紀に放り出される。その様子を冷酷な悪党タールマンに見られ、反重力マシンも奪われるピーターとケイト。そんな2人のロンドンまでの旅を紳士ギデオンが助け…。
友情と家族愛に満ちたSF冒険物語。ギデオンの活躍など話の展開には大人でも血沸き肉躍り、衛生的とはいえない食べ物や環境に現代っ子の子供たちが戸惑う姿もリアル。続編が待ち遠しくなるシリーズ第1作。クリスマスに親子で読むのにいいかも。
(リンダ・バックリー・アーチャー著、小原亜美訳、ソフトバンククリエイティブ、1995円)
タイムトラベラー
摂氏零度の少女
幼いときに目の当たりにした愛犬の安楽死と、初恋の男の子の裏切り。二つのできごとが、涼子の心に人間の傲慢さを刻みつけ、彼女を少しずつ狂わせていく。
母親の期待通り、医者になるべく名門進学校に通い、教師から一流大学医学部合格は確実と太鼓判を押される学業優秀な少女に成長した涼子は、温めてきた計画を実行に移す。それは、母親に劇薬・タリウムを盛るという実験だった。致死量を一度に飲ませるのではなく、食事や飲み物に少しずつ混入させ、観察する。そして、初恋の男の子の名前で、その経過を克明にブログにつづっていくのだが…。
女子高生の狂気を描きながら、正義、両親、倫理、道徳といった既成概念の意味を問いかける。(新堂冬樹、幻冬舎・1575円)
摂氏零度の少女
21世紀 世界遺産の旅
世界遺産をめぐる旅が人気だという。時間と金があれば、確かに訪ねてみたい。まだそんな余裕がなければ、まずは本書での旅を勧めたい。
日本の「石見銀山遺跡とその文化的景観」など今年新登録された22件を含む全851件(7月現在)を紹介している。
日本の14件をはじめ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ・オセアニア、南北アメリカの5章に分け、すべてにカラー写真と索引地図をつけて説明。その写真もすばらしく、表紙にも使われたフランス「モン・サン・ミシェルとその湾」や、タンザニア「カバとアマサギ(ンゴロンゴロ自然保護区)」など壮観だ。(小学館編、小学館・3990円)
21世紀 世界遺産の旅
東京 社用の手みやげ
さまざまなビジネス書が話題になっている。いまや空前のビジネス書ブーム。書店をのぞけば、所狭しとビジネス書が並んでいる。世のビジネスマンは「デキる」男を目指し、日々たゆまぬ努力を続けているようだ。もちろん、ビジネスに必要なスキルを磨くのも「デキる」サラリーマンの必須事項。しかし、業務ノウハウだけでなく、もっと身近なものを見逃しているのではないだろうか。それは「手みやげ」。
ビジネスに必須なのは、得意先との友好関係であることは間違いない。その構築、強化、修復をサポートするのが「手みやげ」だ。得意先への表敬訪問に始まり、接待や謝罪訪問の際に欠かせない「手みやげ」。人と人がぶつかりあうビジネスの場で円滑に仕事を進めるためには、手みやげも戦略的であっていいはず。日本のビジネスシーンに広く定着したこの土産文化を有効に活用しない手はない。
本書は相手をうならせる選りすぐりの手みやげを約40点収録。「初対面のとき」「お祝い、お礼の気持ちを表すとき」「おわびの気持ちを表すとき」「健康志向のお得意様に」など、用途別に分類されている上、手みやげを渡す際のマナーや、各店舗の詳細データも地図つきで掲載している、まさに「使える手みやげの永久保存版」だ。
特に相手方に対して謝罪する必要があるときは、「ピンチはチャンスだと思え」とよく言うように、その対応次第で、むしろトラブル後の方が親密な関係になることもある。「今度あの社長に謝りにいかなきゃいけないけど、何もっていこうかなぁ」と、いつも手みやげの選択に困ってしまうサラリーマンには必携の1冊。
もちろん、ビジネスシーンだけではなく、中元や歳暮シーズンの贈答品として利用しても喜ばれること間違いなしだ。
(宮澤やすみ著、岡山寛司写真、東洋経済新報社刊・1470円)
東京 社用の手みやげ
さよなら、そして こんにちわ
葬儀社の若手社員・陽介は元暴走族で無愛想な顔つきだが、実は笑い上戸で涙もろい男だ。
しかし、葬儀に笑顔は厳禁。陽介はオリジナリティーあふれる工夫で感情を抑えこみ、かわいい妻と、もうすぐ生まれてくる子供のために仕事に励む姿を描いた表題作。スーパーの社員が出世のために必死に健康番組をチェックし商品を発注するが、コロコロ変わるテレビの情報に翻弄(ほんろう)される「スーパーマンの憂鬱」、若き僧侶が「クリスマスをしたい」と妻子にせがまれて、宗教が違うと悩みながらも檀家の目を恐れつつ奔走する「長福寺のメリークリスマス」など7つの短篇を収録する。
うち2編は主婦が主人公だが、それ以外はすべてがんばるお父さんたちをユーモアたっぷりに描いている。読めば元気が出てくる1冊だ。
(萩原浩著、光文社・1575円)
さよなら、そして こんにちわ
心中抄
主人公は、45歳の作家である「私」。一回り年下の女との逢瀬を重ねる中、私は幼い頃の自分に思いを馳せる。
保育園に行かず、ぼんやり川を見て過ごしたこと。小学校に忍び込んで先生の万年筆を盗み、友だちを殴り、教室で立たされたこと。自分だけは死ぬはずがないと、学校の屋上の縁にぶらさがり、走ってくる車に飛び込んだこと。親からも先生からも匙を投げられた私を可愛がってくれた芸者・雪乃とのこと。
だが、彼女は心中によって命を絶ち、大人になった私もまた、女と2人、闇の中の黒い橋を渡ろうとしていた。
過去を思い返すうちに、現実と虚構の境が曖昧になっていく。私が求めているのは何なのか。そして私にできることとは…。
故郷・新潟を舞台に幼少時の記憶を甦らせ、自身の原風景を描き出す。
(藤沢周著、河出書房新社・1470円)
心中抄
作家のうしろ姿
文壇のライバル関係として一時期有名だったのが、丹羽文雄と舟橋聖一。丹羽氏は自ら出資した同人誌「文学者」から多くの作家を出し、丹羽部屋の異名を取った。
一方の舟橋氏は有名作家を集めた「キアラの会」を主宰、当時の紀伊国屋社長・田辺茂一氏と組んで無料の文芸誌「風景」を出していた。
「風景」の創刊時から編集に携わった著者が、寄稿した多くの作家の思い出を語っている。いわば軽い印象記で、遠藤周作創設の宇宙棋院が1年でおしまいになったという、おそらくは伝聞の誤解もある(実際は遠藤死後も黒井千次会長に代わり継続)。
しかし、川端康成にはじまり、谷崎潤一郎、三島由紀夫、井上靖、司馬遼太郎、吉行淳之介、遠藤といったきらびやかな有名作家がずらりと並ぶエピソードは圧巻といえる。(高知新聞社・1900円、山本有光著)
作家のうしろ姿
収穫祭
1982年8月17日。人口わずか14人の首尾木村北西区で、村民が次々と鎌でのどを掻き切られるという大量殺人事件が発生する。暴風雨の中、現場に通じる2脚の橋が流されて地区は孤立し、警察の到着は翌日になってからだった。生き延びたのは、中3の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭1人。4人の証言から、犯人は事件当日、事故死した英会話教室の外国人講師と断定される。
それから9年後。犯人とされる外国人の父親に依頼された1人のフリーライターが、彼の無罪を証明するべく生き残った者たちへの取材を開始。すると、再び、猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌。殺人鬼は一体誰なのか、その理由は…。
予測不能なストーリー展開と、意外な結末に愕然とさせられる。(幻冬舎・2100円、西澤保彦著)
収穫祭
案外、買い物好き
中田英寿選手がイタリアのチームに移籍してからイタリア通いが始まり、ブランドものの服や靴に目覚めてしまった村上氏。イタリア人の青色のシャツに魅了され、ミラノで25分間で13枚のシャツを買ったり、ボローニャーの行きつけの靴の店で一度に3足、4足と靴を買ったり…。世界各都市で購入した日常品から嗜好品まで一つひとつに思いを馳せながら綴る。村上氏の買い物への興奮、高揚感、幸福に溢れるエッセイだ。(村上龍著、幻冬舎、1470円)
案外、買い物好き





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